はじめましてimaiと申します。
「本好きを増やしたい!!!」という想いから、僕が本好きになるまでに試した読書方法を小説化して、纏めたものになります。
一人でも多くの人が本が好きになるきっかけになることを願って書きました。
ブログでは冒頭部分を公開しています。
【読書術】本離れ代表世代ですが読書をやめられません!君も本好きに変われる!?人生絶望中からの充実読書ライフ
【出会い】
20XX年。ある日曜日の午後。某百貨店、屋上テラス。
外の景色を眺める暇な27歳独身男。
「あー、外はこんなに晴れて雲一つないのに、おれの心は真っ暗。なんで? なんでおれの人生こんなんなん」とおれは一人で俯き加減に呟く。
「大学受験は志望校に行かれへんかったし、新卒で入った会社はたったの1年でクビ。
今の会社はなんとか4年おったけど、毎日直属の上司に嫌がらせを受ける。
なんとか耐えてたところ、営業部へ移動。
嫌いな上司から逃れてラッキーかと思いきや、これは吉でなく、なんと凶。
おれはあがり症やから、人と話すの得意じゃなくて、事務職やってたのに。
一番不得意な分野やん。
ほんで一応、文系の私立大学でたけど、27歳で年収300万ちょっと。
奨学金の返済残高がおよそ320万。
あの時すぐ返せるって気がしてたけど、現実生きるのに結構お金が要って、中々返せていない。おまけに彼女と別れて、気づけば早や3年半。
うわ〜、なんやこの人生〜。
まだ他にも不満が山ほどあるけど、この辺でやめとくわ。
だって、自分が惨めすぎて、ださすぎて、もう自分で自分のこと可哀相になってきてるもん。
神様って絶対おれのこと嫌いやんな?やんな?」と呟き、おれは空を見上げ、神様に問いかける。
「もう一回だけ言っとくけど、神様って絶対おれのこと嫌いやんな?
だってさ、おれの仲良い友達とかニューヨークで働いてて、しかも彼女と10年交際した上で結婚して、子供もおるんやで。
ドラマの主人公やん。
もう一人は副業で成功して、年収2,000万やで。
ドラマの主人公やん。
おれ今でも付き合いあるのその友達2人だけやで。2人中2人ともハッピーやのに。
おれのこの現状はなにさ。
いや、もちろん友達の幸せはいいことや。ただおれだけ真逆やん、めっちゃあかん意味で。
そこは神様、おれにもちょっとはハッピーにしてよ。
おまけでもいいから。もうあかんことが多すぎて、もはや涙すらもでやん」
「兄ちゃん、そこどいて。邪魔」とおれの背後から急におっさんの声が聞こえてきた。
振り返ると、50歳くらいでハンチング帽を被り、服よれよれの細身のおっさんが、ベンチに座ったまま、おれの方を見ていた。声の主は予想通りおっさんやった。
「兄ちゃん、聞こえへんか。そこどいてや。このベンチから眺める景色が最高やのに、前に突っ立ってたら、邪魔でしゃあないで」と鼻をほじり、鼻くそを飛ばしながら喋る。
「あっ、すみません。ちょっと考え事してまして」とおれは言い、おっさんの視界の景色に邪魔にならんよう、横に大股で移動した。そして、鼻くそ野郎と思ってしまった。
「うん。知ってるよ。兄ちゃん、普通心の声でやること、だだっ漏れやったで」
「あっ、すみません」
「兄ちゃん、今辛いんか?」と相変わらず、鼻をほじりながら話す。
「えっ?」とおれは言った。何か他にも言おうとしたが、上手く言葉が見つからない。おれの意識は、おっさんの鼻をほじる仕草に目がいってしまう。
「これは読(どく)おじの一人言やねんけど、思い出すなー。
27歳のときやな、あのことはー、懐かしいなー。
読おじ、個人事業失敗して、嫁と子供が逃げていったんやわー。
借金2,000万あったな。いやー、懐かしいー。そんなこともあったよなー」
とおっさんは足を組みながら、他人事かのように空を見上げながら話す。
「えっ?」とおれは唐突な不幸話に思わず、反応してしまう。
おれと同じ歳のときに借金2,000万円!? ほんまに!? それともう一つ、耳に残る。とくおじ? どくおじ? なんか、聞き慣れへん言葉が聞こえてくる。
「誰しも辛い時はあるよ、兄ちゃん。不思議やな、これは何かの縁やで。
読おじも27歳の時、ちょーどここにいてな。同じように眺めてたんよ。
どうしても重ねてしまうわ、昔の読おじと。
ここから眺める景色はすっかり変わってしまったけどな。
そやなー。兄ちゃん、人生変えたろか?」
「えっ?」とおれは言ってしまう。
えっていうの3回目やと思いながらも、やっぱり言葉が他に出てこない。
人生変えるって何!? ほんでやっぱり変や、あのおっさん。
自分のことを「どくおじ」って言ってる。
意味不明や。どくおじってなんや。聞いたことないぞ。
あと、その服装見たら、人の人生変えるどころか自分の人生の方が優先ちゃうん?
絶対まだ借金返せてないか、新しい借金作ってるやろ。
恐い、恐い、恐い。
おれの脳は一度で処理することが多く、プチパニックを起こしている。
「自分何なんさっきから。『えっ?』と『すみません』しか言うてないやん。コミュ症なんか?」
「いや、あの。なんかまさか、こんなところで人に声をかけられると思ってなかったので。
あと、おじさんが僕の歳のとき、まさかここで同じように辛い気持ちになってるとか、人生変えるとか、唐突な話についていけてなくて」
「まあ、そういわれるとそやな。
急に読おじに話しかけられても、びっくりするわな。で、どうするよ。
人生変えてみる?
普通やったらコンサル料を月100万もらうところやねんけど、特別にいらんよ。
縁を感じるものは大切にした方がええからな」
「人生変えるって、何するんですか!?
宝くじを当てる方法とかですか!?
新手の人生変える詐欺ですか!?」とおれは言った。
と同時にコンサル料とやらで、借金を返そうとしているのだと察した。
「アホか。君も分かってると思うけど、人生そんなに甘ないで。
宝くじ買わんと当たる確率はたしかに0になる。
やけど、宝くじの高額当選は雷に打たれるくらいの確率って言われてるんや。
そんなもん人生で1回あったら、奇跡やろ。
おっちゃんが君に伝授するのは、読書や、読書。
もっと現実的なもんや。
今の宝くじの話も本が教えてくれるんや。
これ知ってて、宝くじ買う人ほとんどおらんやろ。
本を読んでる奴は賢く生きれる。
若いときは分からんかっても、歳を取る毎に顕著に差が出るねん。
ほんであと、詐欺と違う。
ちなみに27歳のとき作った借金はとっくに返し終わってるわい。ほんの数年でな。
今は借金返済の話は置いておいて、君からおっちゃんが1円ももらうことはないから安心しい。
これはおっちゃんの奉仕の精神や」
「読書…」とおれはあっけに取られる。「真剣にそれ言ってます?」
「おう。もちろん真剣や」
おれは読書と聞いて愕然とした。人生を変える方法が、何で読書につながるのか今ひとつ分からなかった。一先ず、お金を取られる訳ではないから大丈夫そうだ。
「あのー、読書って今時する人います?」
「そやなー。確かに年々、読書人口は減ってきてる。もう今の時代は、動画配信とか娯楽のコンテンツが山ほど増えたし、おもろいの増えてるから、わざわざ読書するやつそないおらんやろ」
「やのに、僕に読書を勧めるんですか?」
「やのに、勧める。やからこそ勧める」
「はあー・・・・・・」
おっさんは気にせず、話を続ける。
「宝島の海賊たちが盗んだ財宝よりも、本には多くの宝が眠っている。そして何よりも宝を毎日味わうことができるのだ。これ誰の言葉か知ってる?」
「さあ、聞いたことないです」
「ウォールトデズニーや。デズニー。あのネズミで有名なデズニー。
デズニーランドの人や。知ってるやろ? 皆、若者はデズニーランド好っきやろ。
じゃあこれは? 私が人生を知ったのは、人と接したからではなく、本と接したからである。
詩人アナトール・フランス」とおっさんはドヤ顔をする。
「顔がポカンとしとるで。
よき書物を読むことは、過去の最もすぐれた人たちと会話を交わすようなものである。Byデカルト。
どうや。なんか一つでも聞いたことあるか?
まあ、読おじが言いたいのは、人生を充実させたいんやったら、読書はやってた方が得するってことや。
あと最後にこの名言、聞いたことある?
本の知識をドヤ顔で話すのは、自分の全裸を晒け出すのより恥ずかしい。
これ誰の名言か分かる?」
とおっさんは今日の中で、最も良い顔つきで言いきった。
最後の名言が突出してダサく、これは誰でも目の前にいるおっさんのセリフであることがわかる。
やけど、おっさんの名言とも言いづらく、どうすることもできないから、おれは「誰か分かりません」と言った。
あとほんで、デズニーじゃなくてディズニーやろ。
気になるねんと心の中でつっこんだ。
するとおっさんは、なんや自分ノリ悪いなと言わんばかりの目つきで、おれに訴えかけてきた。
おっさんの話を聞いて、晴天の霹靂までいかないまでも、確かに本は大事なような気がしてきた。
おもむろにおれの口は、誰かに操られているように自ずと動き始めた。
「あの、読書の面白さをおれに教えてくれませんか?」
「いいよー」とおっさんはあっさり返事をした。
「けど、一個だけ条件がある」とおっさんは真顔に変わる。
「何ですか?」とおれは恐る恐る訊く。
「読おじのこと、今日から読おじって、ちゃんと呼ぶんやで。読書のおじちゃん、略して読おじや」
そう。この出会いがおれと怪しいおっさん、じゃなくて読おじとの初めての出会いであった。
続きはKindleにて
冒頭部分を読んでいただきありがとうございました。
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